第3回:「西へ東へ大移動」 その1

こんな考え方もあるんです

ノスタルジックな光景を求めて

日本人は農耕民族です。ライフスタイルが変化しても米との縁は切っても切れない関係です。実際に田んぼを耕して、収穫の喜びを知る・・・という生活はなかなかできるものではありませんが、年を取ったら田舎に帰って晴耕雨読の老後を送りたくなるのも、腹の奥底に眠っていた血が騒ぐからでしょう

さて、前回は相続による家の住み替えについてお話したと思います。今回は、一歩進んで、私の考える「日本全国移住計画案」への期待についてです。変なことを言うなぁ、と思われた方もいるでしょうが、日本の相続は土地と住宅がメインであることを考えると笑い事ではありません。私は大真面目に、この発想が実現したら面白いのにと考えているのです。

そもそも一昔前には、地方へ行けば行くほど「ご先祖様から代々受け継いできた土地を減らせない」という並々ならぬ決意や、地元で米を作ることへの誇りが感じられました。政府は国として農業を守るべきであって、宅地で利用する際には許可が必要だと言っていたのも無理はない話です。
しかし、徐々に時代は移り変わり、都心の文化に憧れる人も多くなってくると、日本全国どこの町からも若者たちは首都近辺へ進出。そして、彼らのように田舎に土地を持っている人たちも、「故郷に錦を飾るより、都会で生きて死ぬ!」と考えるようになってきました。もちろん全員共通の考えではありません。若いときに都会に出てきた人たちは、今まさに二極化していると思います。また、こうした環境の変化と心境の変化によるライフスタイルの変遷が大きく影響して、農業の継承者不足という問題にもなってくるのでしょう。

たとえば私の知人の家では、田植えや稲刈りの時期になると家の者だけでは人手が足りず、他県で働く子供や親戚を呼び戻しています。それでも人が集まらないときには、ご近所コミュニティを通して体力がありそうな男性を募集し、謝礼を払う代わりに仕事を休んでもらって農作業をこなし、夜は座敷で大宴会を開くと聞きました。まるで映画やドラマの世界のようですが、昔のように家族全員で仕事をこなすことが難しいため、どこにでもある苦労話なのだそうです。

現在は、都市部のみならず地方でも核家族化が進んで田んぼや畑は少なくなってきています。少なくなるといっても、数だけならばまだたくさんあるのですが、私の知人のように、毎年綱渡りで農作業をクリアしていく家はまだしも、放置されたままボウボウになった土地が多いのです。ただし、そうした荒地を見て、「再生させよう、駐車場なんかにさせないぞ!」と立ち上がる人も存在しています。農耕民族の一員として、田んぼを見捨てられない気持ちは分かります。しかし、人口不足だけはどうやってもなかなか解消しない問題ゆえに、熱い思いも先へ進まないのが現状ではないでしょうか。

田んぼ、稲刈り、米、自然を残したい人たち・・・。何となくノスタルジックな話でしんみりとしていまいました。さて、それでは一息ついたところで、いつもの私に戻り、「本当に宅地にしなくていいの?」という、逆の提案をしてみましょう。皆さんは田んぼ派ですか?宅地派ですか?
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