第3回:「西へ東へ大移動」 その2

こんな考え方もあるんです

夕張支援にもなるんじゃないか

人手を確保できない家の田んぼを宅地にしてはどうだろう?私がそう思うのは、田舎では500万円の資金があれば立派な家が建つからです。たとえば北海道の夕張市は財政が破綻して厳しい状況にあります。しかし、「土地をただであげますよ、移住してきませんか?」などという旨い話があれば、仕事をリタイアしてセカンドライフをどこで送ろうか迷っている人などは、本気で引越しを検討するのではないでしょうか。

退職金を手にし、まだまだ体力もあって元気な人たちが、空き地になったままの土地や耕作する人間のいない田畑をもらい、そこに新しい家を建て定住する・・・。すごいプロジェクトですよね。それでも万が一実現したら、夕張市にはどんどん人口が増えて地域は活性化していくはずです。移住して来た人たちは、リタイアしたと言っても元気ハツラツな六十代。日本人の平均寿命を考えると、あと二、三十年は長生きできます。三十年間も同じように人が流れてくれば、国土の使い方も見直されて都市部と地方の差が縮まると思いますよ。

また、若いときに東京へ出た人やこれから故郷を出ようとしている人は、歳を取って地元へ戻ることを必ず一度は考えます。でも私は、自身の田舎一ヶ所だけを「終の棲家」にしなくても良いと思うのです。あなたが二千万円の退職金を手にしたら、思い切ってそれを四分割する作戦をお勧めします。十年ごとに一回、積極的に家を住み替えていくという人生も「あり」でしょう。たとえば、四十歳から十年ごとに土地を移動して行っても、あなたはまだ八十歳です。相続や郷愁から地元に定住してしまうより、西へ東へ移りながら新しい生活を送る老後も、これからの時代には相応しいと感じています。

このアイディアには、さらにメリットもあるのです。親が家をころころと変えるので、子供は親の遺産をあてにできなくなってキリキリと働くでしょう。近年はフリーターの増加が社会問題となり、頻繁にテレビや新聞で取り上げられています。さまざまな原因が存在することはもちろん、私はやはり、「帰る家や親の土地」があるから甘えていられるのだと思います。逃げ込める家がなくなれば、路頭に迷う前にフリーターもニートも生きる糧を得ようとして働くしかありません。

ちなみに、私は小学生の子供に「お父さんは、お前に家を残さないよ」と言い聞かせています。そのお陰か、せっせとお手伝いをするなど、自分のことは自分でなんとかしようという気持ちが芽生えてきたようです。今後の二、三十年間で、フリーター文化の悪い部分が出てくれば日本はどんどん世界に取り残されてしまうでしょうから、自立する意識が高まることは良いことです。たとえばすぐ近くの中国など、フロンティア精神が旺盛な若者も大勢いるため、私は仕事で大連へ出かけるたびに、中国は「次の時代の国だ」と実感する機会がよくあります。
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