第5回:「耐震偽装は一部の人だけの問題か」 その2

「価格を比較するって」

第三者機関による検査

先月半ば、ある設計事務所の一級建築士が、横浜市に建設中のマンションで「構造計算書(建築構造の安全性を計算により確かめ、設計図書の一部として建築確認申請書に添付するもの。計算方法は建築物ごとに異なるので、専門家の構造設計が必要)」を偽造していたという報道がありました。工事は既に中止されたものの、この建築士が携わった物件は他にも多数あり、国交省は関係する自治体に調査するよう指示しました。

偽造が明らかになったマンションは、大手ハウスメーカーから孫請けしていたもの。指定確認検査機関による建築確認も受けていたそうです。横浜市の再検査でも、5棟のうち3棟で基準値を上回り、2棟も基準値に近く安全性が問題になるレベルではないという結果が出ました。しかし、2005年11月に明らかになった耐震強度の偽装問題以降、対応に追われる不動産業界は世間から厳しい目を向けられています。いわゆる「耐震強度偽装事件」をきっかけとして、今年6月には改正建築基準法も施行されました。それから初めて発覚した偽装問題ということで注目を集めたのです。

そもそも件のマンションは、建築確認申請が改正建築規準法の施行前だったこともあり、第三者機関による二重チェックを免れていました。建築士には、面倒な建築確認をどうにか乗り越えないと工事が中断し、施工会社が損をする・・・というプレッシャーがあったのかもしれません。―とはいえ、第三者機関の導入目的は、「耐震強度偽装事件」の二の鉄を踏まないことにあります。安全性が改めて問われる中、滑り込みセーフでチェックを免れた物件があるかもれないという現実にショックを受けた人も多いのではないでしょうか。

今回のケースでは、建築確認とは別に、ハウスメーカーが耐震性などを評価する任意の住宅性能表示制度を利用したそうです。この機関が構造計算を精査して偽造が判明したことからも、複数の機関が重ねて安全を確かめる手順は絶対に必要であることがハッキリしました。マンションの構造計算書は枚数も多く、コンピューターで再計算しなければ数値の改ざんを見破ることは難しいものです。あえて注文をつけるとすれば、第三者機関にはミスがないようにして欲しいものです。

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