第5回:「耐震偽装は一部の人だけの問題か」 その1

「価格を比較するって」

あなたは自宅の耐震性を気にしている?

先週末、内閣府は10月に行った「大規模地震対策に有効な住宅耐震補強について」の調査結果を発表しました。これは全国3000人を対象に行った世論調査で、1757人から回答があったそうです。なんとなく結果が予測できていた通り、約半数の人が補強工事を行う考えがないことが明らかになりました。

たとえば、まだ記憶に新しい1995年1月の阪神大震災では、住宅倒壊を原因とする死者が全体の9割近くを占めた事実があるにもかかわらず、耐震補強工事を「実施するつもりはない」と考えている人の割合が47.2%にも上っています。マンションやホテル、学校などの耐震偽装問題が次々と明らかになっても、ほとんど対策が講じられていない現実がこうした結果につながったのでしょう。

しかも、調査結果によると耐震補強を予定していない理由のトップは、「お金がかかる」というもの。これは全体の41.9%を占めています。そして「必要性を実感できない」(27.9%)、「効果があるか不明」(13.4%)などと続きます。自分や家族の暮らす家の耐震化が、本当はどれだけ大切なのか意識している人が驚くほど少ないと思いませんか? 日本は世界有数の地震災害多発国であり、東海地方では今後30年の間に大規模な地震が高い確率で起こると言われています。その上、建築基準法に定められた耐震基準を満たすことが「命や財産にかかわる」ことから、最近では社会問題となっているのに、実際にそこに住む人の意識が低ければ身構えようもありません。日本の建設・建築業界は、地震による被害を軽減するために、揺れに強い建物を造る技術を持っているのにもったいない話ですよね。

費用対効果が不安なら、まずは比較・検証してみればいいのです。安全に業者の言い値よりも安くなることだってあるんです。お金と命・財産のどちらが重要なのか、せっかくの機会なのでもう一度考えてみてください。また、耐震性のない住宅は全国で1000万戸以上と言われていますが、今回の調査結果を踏まえた政府によって耐震化を促すための取り組みが一層求められることになるはずです。これから家を建てる予定の方は、ぜひ耐震性のスペックについても重視して欲しいと思います。

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